“もぎりよ今夜も有難う”


「チャーリー」追加上映のお知らせ

日時:6月19日(日) 14時15分整理券配布開始 15時開場 15時15分上映開始
場所:イオンシネマ市川妙典
ご予約:セルロイドジャパンのHPより

5月の上映が早い段階で満席となり、ご予約が間に合わなかった皆さまから沢山のお声をいただきました。その皆さまからのお声が、弊社スタッフのパワーとなっております。本当にありがとうございます。
皆さまのご来場を心よりお待ちしております。

チャーリー公式サイトはこちらから

▼キネカ大森での5/15(日)の初回の模様はこちら


“有難う”

ドキドキしながら手元を凝視していたら、そんなふうに書いて下さいました。
片桐はいりさん。

キネカ大森での2回目の「チャーリー」特別上映会に、いらしてくださいました。
事務所に招待状をお送りしてはいたけれど、お姿を受付に見つけたときには息が止まるかと思いました。

共同配給をしているセルロイド・ジャパンのスリさんが「だれ?」というので、「フェイマス・アクトレス!!! 」とかすれた声で答えたのは覚えています。インド人には……、あまり知られてはいないと思うけども。今まさに朝ドラに出演されていて、その場にいる日本人はほぼ全員間違いなく知っている超フェイマス・アクトレスですとも。

こちらがご招待したにも関わらず、恐れながら料金も頂戴しました。料金を支払ってくださるということに、はいりさんの強い意志を感じました。

その後、ご著書が売店にあると声をかけてくださったので、脊髄反射で走り、購入しました。その流れで、冒頭のサインをいただきました。はいりさんの映画への並外れた愛と、私たちへのご配慮に満ち満ち溢れた、宝物のようなサインです。

終映後もたくさんお話をしてくださって、夢のようなひとときでした。「チャーリー」、楽しんでいただけたように思います! そしてはいりさんの映画愛は、インド映画にも及んでいるのだと、ひしひしと感じました(なんたって私が未見の最新話題作をすでにごらんになっていた!)

そんなわけで、サイン入りのご著書を一気読みしました。

「もぎりよ今夜も有難う」(幻冬社刊)

特上の筆運び。こんな文章をお書きになる方とはまったく存じませんでした。はいりさんが「もぎり」のアルバイトをされていた現・シネスイッチ銀座での話を始め、映画と映画館にまつわるエピソードが満載で、どれもが色彩豊かなショートフィルムのよう。

映画館につきものの痴漢、ハッテン場としての(?)映画館、誰もいない営業時間外のがらんどうの映画館のこと。観客の笑いが渦となって「ばふん ばふん」と扉を押し開けてしまうこと。昭和の映画館はまだこんなに勢いがあったんだ。極めつけは、東京のリトル・インディア西葛西で、インド人向けのインド映画上映に行かれた話。内容も監督も、主演もシャーだかルクだかカーンだかわからない(!)、そんな状態でごらんになった……、「DON 過去を消された男」(シャー・ルク・カーンは主演の俳優名)。のけぞるわあ。

私は、映画も好きだけれど、映画館のことも同じくらい好きです。子どものころはすでにシネコンばかりだったので、単館系の映画館の存在を知ったのは、大学で東京に出てきてからのことでした。アジア映画のパイオニアだったキネカ大森、アルバイト先から近かった飯田橋ギンレイホール。シネコンの晴れやかさやハリウッドムービーの大作感、安定感も好きなので、渋い映画館ばかり行っていたわけではないけれど、とにかく、私は、映画館という空間が好きです。

インド映画にハマったのも、映画以上にインドの映画館が面白かったというのも原因のひとつな気がします。はいりさんが書かれているような昭和の映画館エピソードが、15年くらい前の2000年前後のインドのあちこちの映画館で現役で繰り広げられていました。当時、私はたとえば2か月間、映画の都ムンバイに滞在したら、1日3本は映画館で映画を観ることをノルマにしていました(はい、馬鹿です)。毎朝、新聞の上映広告と睨めっこしてあたりをつけると、ムンバイの街の端から端まで、食事の時間もそこそこに、場末からゴージャス劇場までいろいろな映画館に行きました。こりゃやばいところに来てしまった、とそそくさと退散した剣呑な映画館もあります。

中でも思い出深いのが、今は閉館してしまったLiberty Cinemaという全館アールデコの映画館。トイレのドア、階段のてすりひとつとっても、インドが植民地支配から独立を勝ち取った1947年の建築当時の最先端を思わせる装飾が美しい建物です(映画”Teri Meri Kahaani(2012)「きみとぼくの物語」”に、60年代のこの劇場を再現したうっとりするようなシーンが出てきます)。ここに来たくて同じ映画を何回も観たくらい、世界で一番好きな映画館です。そんな優美なトイレで並んでいたら、「ママおしっこ間に合わなーい」と叫ぶ子どもをむんずと抱えあげ、アールデコの洗面台にシャーっと用を足させていた品のいいご婦人がいたことも、今ではいい思い出です(そんなインドが大好きです)。

事件は現場で起きている……ではなくて、インド映画の面白さはインドの映画館でこそ最大限味わえる(激しく字余り)。

日本にインド映画を紹介したいという衝動と、やっぱりインドの映画館で極めてインド的にインド映画を観たいという思いが常に拮抗しています。デリーやムンバイなど都会のシネコンは、とり澄ました都会人ばかりですけれども、それでもやっぱり面白いんですよ、インドの映画館は。

“「有難う」「有難う」と言い続けたら、有難いことがかならず起きる。”

文庫版あとがきに、はいりさんはこんなことを書かれています。この一文を読んでから改めていただいたサインを眺めたら、はいりさんの心遣いが沁み入るようで、なんともいえない嬉しさがこみ上げてきました。

インド映画に出会って、インドにいなくても、たとえばマレーシアやシンガポールやロンドンやパリやナイロビで、インドやインド映画の匂いを見つけては恋い焦がれて、流れ流れてまさか自分がインド映画を配給する側になるとは。有難いことが本当に起きてしまいました。そしてその初の配給作品「チャーリー」を吸引力にして、またまた別の有難いことが次々起きています。

本当に本当に、関わってくださるすべての方に、「有難う」ございます。まだまだやりますよー!

投稿者: アンジャリ(Anjali)

アンジャリ(Anjali)

Masala Press代表・印流楽しいこと案内人。神奈川県茅ヶ崎市生まれ。東京外国語大学インドネシア語科卒。学生だった1997年にバックパッカーとして単身インドを訪れ3ヶ月を各地で過ごす。以後、インドの舞踊と映画に心酔。ガイドブックなどのライターを経て旅行会社に就職、インド専門添乗員を務めるも、2001年からはインドとロンドンを拠点に放浪生活を送る。2006年に本帰国、外資系証券会社に再就職、10年間の会社員生活を経て、現在、インド映画の印流ブームを興すべく奮闘中。