思い出のインド冬野菜

「もっとカネのありそうな人と場所を選べ」とMasala Press広報タマ子ちゃんにいつも言われているアンジャリです。昨日は所用で平日昼間の表参道と南青山界隈を歩き周り、おカネと時間のありそうな人種をたっぷり観察してまいりました。いいですね、おカネと時間♡ そんなおしゃれな街のスーパーで、持って歩くには重いにもかかわらず、ふと目に入った野菜を衝動買い。


インドにも冬がある

インドは南北3,000キロ以上、東西も3,000キロに迫るほどの広い国なので、常夏の地から積雪のヒマラヤ地域まで気候はさまざま。

2001年〜2002年ごろ、私は北インドのバナーラスにアパートを借りて暮らしていました。北インドのバナーラスはヒンドゥー教のお正月ディワーリを迎えたあたりから秋めいてきて、そのあとの2か月ほど、ちょうど今の時期12月から1月にかけて寒くなります。

寒いといっても朝方に10度前後になるくらいなので北国とは言い難いのですが、暑い時期のほうが長いバナーラスでは充分に「寒い」といえます。街ゆく人も毛糸の帽子やセーター、厚手の上着、頭までぐるぐる巻きのマフラーなどで寒さをしのいでいます。

気温以上に寒い冬

バナーラスの朝のガンジス河
冬のバナーラス、ガンジス河の日の出

建物は基本的に暑い気候仕様で建てられているので、アパートの部屋に備えつけの暖房器具はありませんし、すき間風もビュンビュン、冷水しかでない水道にブルブル。外が寒いので多少は暖かい家のなかに小ネズミたちが侵入し、なにを思ったか私のベッドの下で暖をとっていたりもしました。薄いタオルケット以外の寝具もないのでどうやって冬を乗り切ろうか困っていたら、心優しい友人が寝袋を貸してくれました。

そう、子ネズミたち……。正確には私のベッドの、マットレスをふたつ並べたすき間のシーツの下で暖をとっていました。明け方に至近距離でチューチュー声がするのでどこからかと思ったら、シーツ一枚へだてて子ネズミ一家と一緒に寝ていたわけです。ニンゲンコワイよりもニンゲンアタタカイのほうが勝ったんでしょうね。

冬野菜のたのしみ

そんなバナーラスの冬の楽しみは、その時期に出回る野菜でした。荷台に山もりのゴービー(カリフラワー)を乗せたリアカー(?)が、「ゴービー、ゴービー!」と自慢の喉を鳴らしながら住宅街を売り歩いていたり、バナーラス・ヒンドゥー大学近くの露店の野菜市場でも一面にカリフワラーの売り子たち。家庭のお惣菜の定番であるアールー・ゴービー(ジャガイモとカリフラワーの炒め煮)もこの時期が一番美味しかったです。ちょっといいレストランに行くとある、カリフラワーをスパイシーなヨーグルト衣に漬けこんだのち、丸ごと揚げ焼きしたロースト・ゴービーなどは、カリッと揚がった酸っぱ辛い衣を歯で破るとジュワっとカリフラワーの水気が弾けて、野菜ながら肉々しい食感のごちそうでした。

血の色の野菜

当時なんちゃってベジタリアンだった私は、田舎の単身暮らしで偏った食生活のせいなのか、ときどき貧血でふらふらしていまして。寝込んでいたら、ある日、「貧血にいいらしいよ」と友人がチュカンダルという野菜を差し入れてくれました。どす黒いカブのようなその野菜は、皮をむくときれいな紫色で、スライスして塩をふりレモンを絞ると、土臭さのなかにほんのり甘みがありました。カリフラワーの白さに圧倒されて目立ってはいなかったものの、よく見ると市場でもその野菜がたくさん出回っています。

生でも美味しく、火を通して炒め煮にしたり、ただ茹でて塩をパラリのオイルをたらりで食べても甘くて美味しい。その冬はチュカンダルの虜でした。

ビーツのスープ

路上の野菜売りのおにいさん
バナーラス・路上の野菜売りのおにいさん

その後、私はインドからイギリスに渡りました。ありとあらゆる景色が寒々しいロンドンの冬、ついでに身も心も寒かった私は、裏通りのすすけた八百屋で再びあのチュカンダルに出会いました。

チュカンダルの英語名はBeetroot、日本だとビーツと呼ばれ、ロシアやウクライナ料理のボルシチを鮮やかなピンク色に染める野菜と同じものでした。

ひと山、買いました。鍋で玉ねぎをじっくり炒め、頃合いにスライスしたビーツを投入、かぶるくらいの水を加えます。ビーツが柔らかくなったらミキサーでガー。鍋に戻して塩コショウ。ひと煮立ちしたら完成。仕上げはサワークリームや生クリーム投入で贅沢したいところ、貧乏だったので安いギリシャあたりのオリーブオイルをひと垂らし。

あったまります。

ビーツのスープは街の食堂でもときどき見かけました。ハーブが大好きなイギリス人はビーツのスープにもハーブやらショウガやらいろいろぶちこみます(けれどだいたい塩味が足りない)。それはそれでイギリスらしくて悪くないけれど、私はこの玉ねぎとビーツだけのスープがすきです。

日本でも冬になると長野県や北海道産のものを見かけます。アルミホイルで包んで焼き芋のようにオーブンで焼くだけでも美味しい。

おしゃれな街のスーパーだけでなく、もっと普通の近所のスーパーにも出回ってくれると嬉しい野菜です。

投稿者: アンジャリ(Anjali)

アンジャリ(Anjali)
Masala Press代表・印流楽しいこと案内人。神奈川県茅ヶ崎市生まれ。東京外国語大学インドネシア語科卒。学生だった1997年にバックパッカーとして単身インドを訪れ3ヶ月を各地で過ごす。以後、インドの舞踊と映画に心酔。ガイドブックなどのライターを経て旅行会社に就職、インド専門添乗員を務めるも、2001年からはインドとロンドンを拠点に放浪生活を送る。2006年に本帰国、外資系証券会社に再就職、10年間の会社員生活を経て、現在、インド映画の印流ブームを興すべく奮闘中。