『Lion/ライオン ~25年目のただいま~』観てきました




さて、先日、映画『Lion/ライオン ~25年目のただいま~』を観てきました。

このお話の元となったインド系オーストラリア人青年のニュース、2012年当時、ずいぶんとSNSを賑わせたのを覚えています。映画化されたりして、なんて言っていたら本当に映画化しましたね。

公式サイトはこちら。今日の画像は公式Facebookページからお借りしています。

あらすじやキャストは公式サイトを見ていただくとして。土地名など出していますがストーリー上のネタバレはなしの感想とご紹介をば。

主人公の生まれ故郷

前半は、主人公サルーの生い立ちから行方不明となるまでのストーリーが丹念に描かれます。

冒頭、石炭を運ぶ列車から兄グッドゥとともに石炭を盗む描写がありました。インドにおける「貧しい少年時代」の描写にはどうもこの「石炭泥棒」がよく出てきます。”Gunday「ならず者」”(2013)しかり、”Bhaag Milkha Bhaag「ミルカ」”(2013)しかり。パッと出てこないけれど、もっとあったはず。

“Gunday”(2013)より。主人公ふたりは少年時代に石炭泥棒で生計を立てた

作中、ちょくちょく耳にする「石炭」を意味するヒンディー語”コイラ”で思い出すのは、”Koyla「石炭」”(1995)。シャールク・カーンとマードゥリー・ディキシットが出ていて、なぜか我が家に日本語字幕付きのDVDがあります。邦題は『コイラ~愛と復讐の炎』。お話忘れちゃったから今度観よう。

大昔買った”Koyla” 日本語字幕のDVD。4,800円!

主人公サルーの故郷の村の岩だらけの荒涼とした風景。最後に出てきたカンドワ(Khandwa)という土地がどのへんなのだろうとあとから調べたら、インド中部マディヤ・プラデーシュ州にありました。地理の授業などでも出てきた「デカン高原」の北側です。

試しにここから、サルーが施設に入ったカルカッタ(現コルカタ)までGoogleのルート検索をしましたら。

遠い! 遠いよ!

サルーが乗ってしまった路線とは違いますが、私もインドの列車に乗り換えなしで2泊3日乗ったことがあります。この長距離列車で一緒だったインド人の乗客の皆さんは、都会へ仕事に出たり、親族を頼っての移動であったりと、レジャーとしての旅行ではなく、なにか必要があっての移動が多かったように記憶しています。

サルーを乗せた列車の車窓がリアルで、たった5歳の子がひとりぼっちで眺めるには絶望的で。日本ならば、たとえば青森駅から博多駅まで1,500キロあまりを新幹線に乗ったとしても半日足らずで着いてしまいますが、インドの1,500キロはあまりにも遠いです。

早朝のニューデリー駅
インドの車窓から

圧巻のカルカッタの描写

サルーがたどり着いたのはインド東部の大都市カルカッタ。インド全土から中長距離列車が発着する巨大なターミナル駅です。東京でいうなら上野駅みたいな(たぶん)。

私はこの駅で何度も迷子になりました。その昔うんと若かったころ、プラットフォームでタバコを吸っていたら(きゃー不良!!)、通りすぎる人が皆ジロジロ見るので「女がタバコ吸うからってなにが珍しいの!」とひたすらガンを飛ばしまして。同じ列車待ちの垢抜けない青年が、遠慮がちに「ここ、No smokingだよ」って教えてくれたっけ(若いってこわい)。

“Gunday”(2013)より。カルカッタの象徴ハウラー橋をバックに踊るならず者たち

そんな、大量の人が行き交うカルカッタ鉄道駅の様子も、カルカッタといえば代名詞的に登場する威風堂々のハウラー橋も、河で洗濯する人々も、まさに、ザ・カルカッタ。

スラムであったり孤児院であったり、暗い描写の多いカルカッタのシーンですが、実際のカルカッタは綺麗な街です。衛生的という意味での「綺麗」ではなく、イギリス領だったころに首都機能があった街としての、歴史や文化がもたらす独特の美しさがある街です。端正なコロニアル調にしぶとく抵抗するインドの原色、その組み合わせの妙とでもいいましょうか。

子どもを狙う人買いが暗躍するかと思えば、サルーを救い出した慈善団体のミセス・スードのような良識ある上流階級婦人もいる。

なんとひどい国、恐ろしいところ。そんな面ばかりではなく、人間の良識と邪悪さ、美しさと醜さ、希望と絶望、そんな両極端なものが背中合わせに存在するのがインドなのかなというふうに私は思います。

ナワちゃんの活躍

そうそう、インド映画ファンには嬉しい点として。近年、ボリウッド映画でその存在感を増している怪優ナワーズッディーン・シッディーキー(Nawazuddin Siddiqui)がちょっとだけ出ています。極悪にも純真にもなる、これぞ役者といいたくなるような俳優ですね。

ナワちゃん公式サイトより

日本公開作では「めぐり逢わせのお弁当(The Lunchbox)」(2013)のちょっとお調子者の元孤児の部下や、「女神は二度微笑む(Kahaani)」(2012)での鬼警部役などで目ざとい固定ファンがつきました。名脇役と思っていたら「Manjhi – The Mountain Man」(2015)では主演、ときに狂気をはらんだ不屈の男を演じていて、ますますただ者ではない感じを醸し出しています。

本作の出演時間は短いし日本語の公式サイトには紹介もないけれど、とてもよかったです。いつかこの人のめちゃくちゃ読みにくい名前が日本でもポピュラーになるといいな……。

やたら男前になったデーヴ氏

「スラムドッグ$ミリオネア(Slumdog Millionaire)」(2008)から9年。

もっさりしていたデーヴ・パテル氏が、本作ではやたら男前になっていました。ふざけているようで真面目におもしろかった「チャッピー(CHAPPiE)」(2015)で「おっ」と思ったものの、あまりヒット作には恵まれていなかったようで、本作でやっとやっとの大当たり。

イギリス在住時に見たBBCの番組で、パテル(Patel)という姓は西インド・グジャラート州出身商人のもので、ビジネスチャンスを求めて北アフリカに渡り、のちに迫害を逃れてイギリスに移住した者がルーツであるとやっていました。Wikiによるとデーヴ氏の両親はやはりケニア出身だそうで、本人はイギリスで生まれ育ったものの、祖先のルーツはグジャラート州なんですね。

そういえば、タンザニアに行ったときに宿の近くに”Patel Shop”という雑貨屋があり、ヒンディー語の通じるおじさんがいました。アフリカに来ても結局インドを求める己に呆れつつ、毎日コーラを飲みに行き、ひじょうに怪しいヒンディー語でおじさんとおしゃべりしました。遠い記憶。

本作の原作者であるサルー・ブライアリー氏と並ぶとデーヴ氏のかっこよさが際立ちます(笑)。ま、それは映画的でよいということで。サルー氏も公演などで世界中を飛び回るうちになにかが変わったのか、直近のお写真を拝見すると精悍でいい顔をしていらっしゃいます。


ということで、連日話題になっている通り、感動作であることは間違いありません。涙腺注意報です。本日つらつらと書いた私の個人的な思い出話や好みはともかく、ちょっと前のインドの模様がよくわかる作品でもありますので、ぜひ映画館に足をお運びくださいませ。

そうそう、当時は場所の特定にFacebookもけっこう絡んでいたと思うのだけど、作中にFacebookの「フェ」も出てこないのは、やっぱりスポンサーがGoogleだから、ですよねえ。大人の事情にちょっとだけ現実をみました。


5/27(土)〜6/2(金)、ユジク阿佐ヶ谷にて上映決定!
インド映画「チャーリー -Charlie-」もどうぞよろしくお願い致します。

公式サイトはこちら

さっくりどんな映画か知りたい人はこちらをチェック!
“チャーリー -Charlie-“Naverまとめ


アンジャリ、ブログはじめました
人生に必要な知恵はすべてインドから学んだ -印流楽しいこと案内人、インドで食っていこうと奮闘なう-

投稿者: アンジャリ(Anjali)

アンジャリ(Anjali)

Masala Press代表・印流楽しいこと案内人。神奈川県茅ヶ崎市生まれ。東京外国語大学インドネシア語科卒。学生だった1997年にバックパッカーとして単身インドを訪れ3ヶ月を各地で過ごす。以後、インドの舞踊と映画に心酔。ガイドブックなどのライターを経て旅行会社に就職、インド専門添乗員を務めるも、2001年からはインドとロンドンを拠点に放浪生活を送る。2006年に本帰国、外資系証券会社に再就職、10年間の会社員生活を経て、現在、インド映画の印流ブームを興すべく奮闘中。