南インド映画祭「テリ 〜スパーク〜 」(Theri) 観てきました!

南インド映画祭SIFFJ(South Indian Film Festival Japan)を連日お楽しみのみなさま、お気に入りの作品は見つかりましたか? まだの方は、南インドにどっぷり浸れるこの機会をお見逃しなく!

開催は東京は5/11(木)まで、大阪は5/12(金)まで。詳細は公式サイトでご確認ください。
南インド映画祭公式サイトはこちら


今日は「テリ 〜スパーク〜」(Theri) をご紹介します。

主演はヴィジャイ。彼もまた、映画監督の父とプレイバックシンガー(映画の吹き替え歌手)の母の元に生まれたサラブレッド。1974年生まれなのでアラフォーを超えていますが、類稀にみる童顔で驚異のアンチエイジングを体現しているタミル語映画の不滅のアイドルです。

インド人男性は少年期と中年期の間の若者期がなくて、うっとり見惚れるような美少年がちょっとみないうちにまごうことなきおっさんに変貌していたりします。とくに従来の南インドの男性らしさはすべからく「頼もしさ」に集約されるので、顔面にも腹部にもある程度の貫禄がないと一人前ではない、という認識の違いがあります。

そんななか、いまだ少年の雰囲気を残しお腹も出ていないヴィジャイは、軽やかなダンスと華麗なアクションで「頼もしさ」を醸し出しています。またヴィジャイの出演する作品は脚本が練られておりハズレがないという点も彼の人気を不動のものにしています。

ストーリー

ケーララ州でパン屋を営むジョセフ・クルヴィラ(ヴィジャイ)は、まだ幼い娘ニヴィを大切に育てている男やもめ。お互いに「ベイビー」と呼び合い仲良しのふたりだが、あるときふとしたきっかけで街のチンピラに因縁をつけられてしまう。

ニヴィのことをなにかと気にかけていた幼稚園の教師アニーは、警察署での警官とジョセフのやりとりに疑問を持ち、その夜、ある警官が戯れにジョセフに呼びかけた「ヴィジャイ・クマール」という名前をインターネットで調べ始めた。

いっぽう、チンピラたちは深夜にヴィジャイの自宅まで押しかけてきた。善良な一般市民のジョセフは暴力を嫌い、殴られ蹴られ続けるが、チンピラがニヴィにも手を出そうとした瞬間、打って変わった身のこなしでチンピラたちを次々と成敗していく。

そんななか、ヴィジャイ・クマールが何者かを突き止めたアニーがヴィジャイを訪ねてきて、暴れまくるジョセフの様子を目撃してしまう。

ヴィジャイ・クマールとはいったい誰なのか? ジョセフはなぜ別人の名前を語って暮らしているのか?

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みどころ

インド映画によくある、スターのひとり二役ものといってしまえばそれまでですが、本作は主演のヴィジャイによる、ジョセフ・クルヴィラというケーララ州に暮らす善良な男と、自信に満ち溢れ数々の部下を率いる警官(警視正的な偉い人です)ヴィジャイ・クマールの演じ分けが素晴らしいのです。

ジョセフ・クルヴィラは、そのファーストネームが示す通りキリスト教徒です。クルヴィラはケーララ州に多いキリスト教徒の姓だそう。いっぽうでヴィジャイ・クマールは、インド全土にいったい何人同姓同名がいるか分かりませんが、バリバリのヒンドゥー教徒の名前。インド人的には、名前を聞いただけで背景となる信仰や、おそらくは職業のおおまかな分類も推察できるという設定です。

またまた無理やりねじ込みますと、来たる5月27日(土)からユジク阿佐ヶ谷で上映されるわれらが配給作「チャーリー -Charlie-」にもヒロインの婚約者として、クルヴィラという人物が登場しますよ。ぜひ劇場でご確認くださいね。はい、CMここまで(笑)

童顔メガネに思わずキュンとくるジョセフはこちら。よきパパです。顔が小さく手足が長く、躍るとそのスタイルのよさが際立ちます。

ジョセフ・クルヴィラという人物を演じるヴィジャイ(VIjay)

娘がまたかわいいんです。

「ムトゥ 踊るマハラジャ」のヒロイン・ミーナの娘がヴィジャイの娘役

「誰だ!」(Yevadu)にも出演していた英国人女優エイミー・ジャクソンがニヴィの幼稚園の教師として登場します。サリーを着こなしたりして、「誰だ!」よりはインド人らしい雰囲気を出していますが、ヘアスタイルがなあ、ちょっとヅラっぽいんだなあ(ウィッグといいますね)。まあ、美しいことは美しいですよ、はい。

娘の学校のやけに艶っぽい先生にはエイミー・ジャクソン

そしてヴィジャイ・クマールとしての顔がこちら。キリッとした警官で、ジョセフとはガラっと雰囲気が変わります。歩き方まで違います。そして警官の制服がよく似合います。胸キュンです。

ヴィジャイ・クマールという別の顔があった?

もうひとりのヒロイン、ヴィジャイ・クマール時代のお相手役はサマンタ・ルート・プラブ演じるミトラ。華やかさと知性がバランスよく共存している女優さんです。現在のジョセフと娘ニヴィの生活にはミトラはいません。その理由が後半、解き明かされていきます。

サマンタ・ルート・ブラブ

この過去のヴィジャイ・クマール時代のエピソードは、インドが抱える闇の部分を正面きって描いています。日本人の感覚からすると「ちょっとありえない」と思われる状況も出てきますが、娯楽作品でこういった問題を観客に突きつけ、考えるきっかけにするというあたりに製作陣の強い意志を感じました。

ヴィジャイが見せるとてつもない怒りの涙に、見ているこちらも思わずもらい泣きです。その後、悪役と対峙するときもいい目をしていました。日本にももちろん様々な「理不尽」がありますけども、インドには日本の数倍の「理不尽」があります。

弱い者、持たざる者は泣き寝入りするしかないといった状況もごく普通にあったりします。そういうなかで、こんなヒーローを映画で見せることである種のカタルシスを得る人もたくさんいるのだろうなあと思いました。

魅力的な脇役のみなさん

インド映画に限らず、いい映画にはいい脇役がいますね。本作にも楽しませてくれるこんな方々がいました。

まずはヴィジャイ・クマールの母。ああいるねえ、こういうタミルのお母さん、という感じの女優さん。私アンジャリも、この人にすっごくよく似たインド人女性の知り合いがいます。タミル語、テルグ語、マラヤーラム語、カンナダ語と南インドの映画に出まくっており、南では知れたお顔のようですよ。くるくる変わる表情が見ていて飽きません。

母親役にはラディカ・サラートクマール。お茶目な母さんです

もうひとり注目は、ヴィジャイ・クマールの忠実な部下、ラジェンドランを演じる、その名もラジェンドラン。酒焼けしたようなかすれ声と、極悪にも好々爺(にはまだ早いか)にもなる不思議な風貌で本作の端々を盛り上げています。ジョセフまたはヴィジャイにいつも連れ添っている古女房的な役どころで、パン屋のスタッフ、警官、そして最後はまたちょっと違う設定を演じています。もともとはスタントマンで数々の映画でスタントをこなしたとか。

今回の日本語字幕は、大のタミル語映画好きとして長年、Webサイトでその魅力を語っていらっしゃる「むんむん」さんがご担当されています。言語も文化背景もわかっている方が愛情をたっぷり注いでつけてくださる字幕はやはり見応えがあります。

そんなわけで、本作は東京5/6(土)13:00から、大阪5/9(火)11:00からです。どうぞお見逃しなく!


5/27(土)〜6/2(金)、ユジク阿佐ヶ谷にて上映決定!
インド映画「チャーリー -Charlie-」もどうぞよろしくお願い致します。

公式サイトはこちら

さっくりどんな映画か知りたい人はこちらをチェック!
“チャーリー -Charlie-“Naverまとめ


アンジャリ、ブログはじめました
人生に必要な知恵はすべてインドから学んだ -印流楽しいこと案内人、インドで食っていこうと奮闘なう-

投稿者: アンジャリ(Anjali)

アンジャリ(Anjali)
Masala Press代表・印流楽しいこと案内人。神奈川県茅ヶ崎市生まれ。東京外国語大学インドネシア語科卒。学生だった1997年にバックパッカーとして単身インドを訪れ3ヶ月を各地で過ごす。以後、インドの舞踊と映画に心酔。ガイドブックなどのライターを経て旅行会社に就職、インド専門添乗員を務めるも、2001年からはインドとロンドンを拠点に放浪生活を送る。2006年に本帰国、外資系証券会社に再就職、10年間の会社員生活を経て、現在、インド映画の印流ブームを興すべく奮闘中。