ヒンドゥー教のお正月ディワーリ

ようやく週末ですね! ハロウィンが終わるなりあまりに鮮やかにクリスマス仕様に変わった街に戸惑いを隠しきれず、一方では本サイトのリリースにドキドキワクワクな、長い長い一週間でした。Masala Press主宰のアンジャリです。選挙カーと同じで、毎度名乗りすぎるのもうっとおしいですねえ。明日からはもう少し書き出しを工夫することにします(たぶん)。

さてインドでは、ヒンドゥー教のお正月、ディーワーリーもそろそろ終盤に向かっているようです。日本のお正月的に考えると、いままさに三が日が過ぎようとしているところでしょうか。

本日はインドはバナーラス(Banaras)、またはヴァラナーシー(Varanasi)、またはベナレス(Benares)、ああ面倒くさいのでここではバナーラスで統一させていただきます……の話をしましょう。

遠藤周作大先生の小説「深い河」の舞台となった街バナーラス。インドの人口の8割を占めるといわれているヒンドゥー教徒にとっては最大の聖地で、ここで死に、ガンジス河に遺灰を流してもらうことが最大の喜びとされています……というのが教科書的な概要です。

インドは実に広く、州によって街によってがらりと雰囲気が変わるものですが、バナーラスはなんといいましょうか、外国人の思う「ザ・インド」な要素がたくさん詰まっていまして、独特の雰囲気があります。そんな街なので、普通のツアー客もいれば、ヒッピーの生き残りのような人、スピリチュアルな人、音楽や舞踊やヨーガを学ぶ人、長逗留しすぎて生産性を失った人生いろいろダメな人、さまざまなタイプの旅行者がいます。現地で結婚したり暮らしている外国人もそこそこ多い街です。

最近の映画ですと、Raanjhanaa<ウィキペディア(英語)はこちら>という作品でバナーラスが舞台になっていました。

Banarasiya 「Raanjhanaa(2013年)」より

実際のバナーラスのごちゃごちゃした風景を思うとちょっとこぎれいすぎる気もしますが、ガンジス河の抜け感など、うまいこと映り込んでいて魅力的に仕上がっています。デリーやムンバイなどの大都会と比べると格段にイモっぽく(死語)、人口でいえば100万人を超えた都市なのに、印象としては巨大な「村」という感じがします。

バナーラス・ヒンドゥー大学(Banaras Hindu University、以後BHU)で日本語を教えている千晶先生に、現地の模様を送っていただきました。ウィキペディア(英語版)の解説及び千晶先生による解説なども交えてお届けしましょう。ちなみにヒンドゥー暦は太陰暦なので、西洋のカレンダーでは毎年日付が変わります。

※ 下記はバナーラス及びざっくりt北インドの模様を基準にしています。日本でも地域によってお正月の慣習が違うように、同じヒンドゥー教でも地域によって細かい点が異なります。もし間違っていたらどうか生暖かく見守るか、優しく訂正して下さい!


■ 第1日目 Dhanteras

ステンレスの皿など台所用品を買い求める人々
ステンレスの皿など台所用品を買い求める人々

この日はダンテーラス(Dhanteras)と呼ばれ、豊穣の女神ラクシュミー(Lakshmi)を迎え入れるために、ランゴーリー(Rangoli)と呼ばれる吉祥紋を玄関先に描いたり、花や灯明で家中をきれいに飾ります。日が暮れてからは夜通し灯明を灯します。この日は金銀製品や、台所用品を買うと縁起がよいとされており、それらを買い求める人で街はごった返します。インド経済的には年末商戦のキメどころといったところです。露店の売り子から宝石屋までセールセールセールの嵐、商人魂が炸裂します。

千晶先生もステンレス製のスパイス入れを購入されたそうです。350ルピー(本日のレートで650円)、先生、意外と慎ましいです。


■ 第2日目 Naraka Chaturdasi

2日目は、ナーラーカ・チャトゥルダースィー(Naraka Chaturdasi)。人々は日の出前に特別な沐浴をして身を清めたり(バナーラスの場合、祭り期間でなくてもガンジス河は毎朝、沐浴する人で溢れていますが)、お祝いの花火や爆竹を鳴らしたりします。

翌日は明け方に千晶先生から「今日は徹夜ですう〜」とへろへろな様子のメールがきました。ええ、寝られないんですよね、うるさくて。街じゅう煙がもうもうと立ち込めていて、健康にも著しくよくないです。はい。

いったいどこに隠し持っていたのかと思うほど花火、爆竹の爆音が朝まで続きます。商業都市ムンバイ在住のカトリック教徒の友人は、先週すこし話した際、「ディーワーリーの間は爆竹の音に驚いて飼い犬が一晩中怯えるので、家族と犬を連れて実家のあるゴアに帰省する!」と断固たる口調で宣言していました。

ちなみに私はイギリスに暮らしていたこともあるのですが、冷え込みも厳しくなってきたこの時期、夜、あちこちで花火が上がっている音を聞いて「さすがイギリス。インド系の住民が多いから、みんなきちんと自分たちのルーツであるディーワーリーを祝っているのだなあ」などと感心していましたら、それは11月5日に行われるガイ・フォークス・ナイトというイギリスの風習でした(翌日のニュースで知りました)。ああトンデモ勘違い。


■ 第3日目 Lakshmi Pooja

花火と爆竹の饗宴から一夜明けたこの日がディーワーリーの本番、いわゆる「新年」です。新しい衣服に身を包み、新年のごちそうや甘いお菓子を楽しみます。灯明や花火、爆竹はこの日も続きます。また、夕暮れになると祈りを捧げる人たちでガンジス河のガート(河に入っていけるようにしつらえられた階段)沿いがたいへん賑わっていたそうです。この日は各家庭でも、迎え入れた豊穣の女神ラクシュミーと、商売や学問を司る象の顔を持つ神様ガネーシャに祈りを捧げます(そしてそのお祈りの進め方お作法ハウツーがいろいろなサイトで解説されています。たとえばこんな感じで→ここをクリック)。

灯明を捧げる女性たち
灯明を捧げる女性たち

■ 第4日目 Balipratipada

4日目はバリプラティパーダ(Balipratipada 舌かみそう!)。この日は特に、夫婦のお互いの献身や愛情を祝う日で、夫は妻になにかしら贈りものをするのだとか。


■ 第5日目 Bhaiya Dooji

5日目が最終日となります。大人から子どもまで女性が集まって、実兄弟及び義理の兄弟の健康を祈ります。訪ねてきた兄弟にごちそうや甘いお菓子をふるまいます。男女のきょうだいの絆を深める日だそうです。


ざっくりまとめてみますと、新しいものを揃え神様をお迎えする前半と、家族や親戚との絆を深める後半、という流れです。親戚同士での行き来が多かったりするのは、日本のお正月や西洋のクリスマスと同じですね。

いろいろと違うことはあっても、人が求めるものは結局同じなのだなあと改めてしみじみして、今日はこのへんで、ナマステ、ナマステ、ナマステ!

トップ及び本文中の写真提供:鈴木千晶


本日の地名:バナーラス(またはヴァーラナーシー、ワーラーナーシー、ベナレス)

投稿者: アンジャリ(Anjali)

アンジャリ(Anjali)
Masala Press代表・印流楽しいこと案内人。神奈川県茅ヶ崎市生まれ。東京外国語大学インドネシア語科卒。学生だった1997年にバックパッカーとして単身インドを訪れ3ヶ月を各地で過ごす。以後、インドの舞踊と映画に心酔。ガイドブックなどのライターを経て旅行会社に就職、インド専門添乗員を務めるも、2001年からはインドとロンドンを拠点に放浪生活を送る。2006年に本帰国、外資系証券会社に再就職、10年間の会社員生活を経て、現在、インド映画の印流ブームを興すべく奮闘中。