母なるインドよ

Act of Godという言葉があります。「神の所業」という意味から転じて「天災」を指すときによく使われます。

2週間前に大規模な洪水が起き、その復旧もままならないうちに数日前から再び豪雨に見舞われているインド南部のタミル・ナードゥ州チェンナイでは、洪水被害の規模がさらに拡大しています。

チェンナイはもともと大都市ですが、ここ数年は外資系企業の誘致にともないさらなる開発が郊外にも広がっています。飽和状態のデリー、ムンバイに続いて日本企業の進出も増え始めている地です。

また12月から翌年1月のチェンナイは、市内各地にある劇場で音楽と舞踊の祭典が開催されるDecember Season(ディセンバー・シーズン)として名高く、世界中から南インドの古典音楽や古典舞踊のファンが集まり盛り上がりを見せる季節でもあります。

市内が水浸しの模様がツイッターなどでも投稿されています。床上浸水どころか、玄関口である空港まで水浸し。乗客を避難させるため空軍の航空機が出動するまでの事態になっています。ディセンバー・シーズンに合わせてチェンナイ入りしようとしていた友人知人もあちこちで足止めを食らっています。チェンナイ空港に着陸できず目的地に引き返した飛行機もあるそうです。

死者の数も増え続けており、電力の供給が途絶えるなど一般市民の生活へも大きな影響が出ています。私も雨季のバナーラスで豪雨のなか、道に水が溢れて乗っていた自転車ごと流されたことがあります。たいして早い流れではありませんでしたが、水の力はゆっくりであっても簡単に抗えるものではなく、じわりじわりと水位を増していくのが大変怖かったのをよく覚えています。

映画界からも俳優たちがこぞって支援金を寄付しているようです。少しでも被害が少ないことを、そして一日も早い復旧を祈ります。

さてこの洪水被害。はたしてAct of Godなのか? という問いかけが地元メディアから発信されています。

拡大する都市とその開発、水路となっている河川や湖の、違法も含む埋め立てによる排水システムへの影響。都市開発にともなう自然破壊は、我が日本も辿ってきた道です。私アンジャリはピュアでもスピリチュアルでもエコロジストでもてんでなく、適度に腹黒く適度に自己中心的に生きていますが、それでも、こういうの、もうちょっとなんとかならんのかと思います。インドも日本も。Pray for Chennaiと掲げてはみましたが、祈るよりもっとほかにできることをやらねばならぬ、と思っています。

19世紀末、イギリス植民地支配からの独立運動が盛んになり始めたころに詩聖タゴールが取り上げたことで、国民歌(国家はまた別にある)としての重要な位置づけをされることになったVande Mataram(ヴァンデ・マタラム)という歌があります。母なるインドを讃える詩で、国民的作曲家A.R.ラフマーンが1997年のインド独立50周年にリリースしたアルバムに収録されていたメロディが広く知られています。

これに本年、また新たなバージョンが加わりました。ウォルト・ディズニーが制作を手がけた”ABCD2 (Any Body Can Dance2)”で、国際ダンス大会に出場するインド代表のダンスチームが踊る曲として登場します。ダメチームの烙印を押されたダンスチームが紆余曲折を経てようやく晴れ舞台で踊ることができるフィナーレの曲で、愛国歌として重量感たっぷりの素晴らしい出来、ついでにいうと、若手俳優やダンサーたちの惚れ惚れするような筋肉美もみどころです。

母なるインドに平安あれ。


本日の地名:チェンナイ

投稿者: アンジャリ(Anjali)

アンジャリ(Anjali)
Masala Press代表・印流楽しいこと案内人。神奈川県茅ヶ崎市生まれ。東京外国語大学インドネシア語科卒。学生だった1997年にバックパッカーとして単身インドを訪れ3ヶ月を各地で過ごす。以後、インドの舞踊と映画に心酔。ガイドブックなどのライターを経て旅行会社に就職、インド専門添乗員を務めるも、2001年からはインドとロンドンを拠点に放浪生活を送る。2006年に本帰国、外資系証券会社に再就職、10年間の会社員生活を経て、現在、インド映画の印流ブームを興すべく奮闘中。